腰部コンパートメント症候群について

愛知県春日井市の鍼灸マッサージ室ゆうせんの山本眞幸です。

このページでは近年「第３の腰痛」とも呼ばれている腰部コンパートメント症候群について書いてみたいと思います。

これは特別難しいものではなく、早い話腰背部の筋肉の疲労と衰えが原因です。

つまり５０代以上の方（特に高齢者）で立ち仕事をされている方（特に前かがみ気味姿勢）、運動不足気味の方などには起きやすいタイプの腰痛です。

そもそも腰痛には椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症などの原因のはっきりしている特異的腰痛とそれ以外で原因のはっきりしない非特異的腰痛があります。

一般的に非特異的腰痛が全体の８５％と言われていますが、その中でも腰部コンパートメント症候群は比率が高いのではないかと思います。

ここでは腰部コンパートメント症候群について簡単に説明すると同時に、セルフケア方法をご紹介します。

前腕や下腿では指を動かすための多くの筋肉が走行していて、筋膜などにより幾つかの区画（コンパートメント）に分かれています。

例えば膝下の下腿部では以下左図のように４つの区画に分かれています。

骨折や打撲などで筋組織の膨張が起こると区画内圧が上昇し、区画内にある神経や血管を圧迫して痛みやしびれが出る症状がコンパートメント症候群です。

一般的にコンパートメント症候群は下腿部を指すことが多く、捻挫や骨折、スポーツでのオーバーユースが原因で起こります。

同じようなことが腰背部で起こる症状を腰部コンパートメント症候群と呼んでいます。

主に腰背部筋の筋内圧上昇による痛みや重だるさが多いです。

福島県立医科大学の調査によれば、腰痛のある８７２人（平均年齢６３歳）の内４４％が腰部コンパートメント症候群だったそうです。

腰部コンパートメント症候群は腰背部筋の中でも特に背骨沿いにある脊柱起立筋とその奥にある多裂筋の筋疲労と筋力低下が原因になります。

この二つの筋肉は姿勢維持筋として立位でも座位でも働いています。

背中の丸まった猫背姿勢（円背）では筋肉が伸ばされながら姿勢を維持するため収縮することになります。

伸ばされながら収縮する状態を「伸張性収縮」と言って筋肉にはとても大きな負担になります。

この状態が長時間続くことで筋疲労が起こり、内圧が上昇して血管障害で痛みや重だるさが出ることになります。

年齢とともに背中が丸まってくるので６０代以降の高齢者に多いのが特徴です。

脊柱の円背は骨盤の後傾とセットで起こるので、骨盤へのアプローチも大切です。

1. 歩行時の痛みや重だるさ
2. 立ち仕事をしていると腰が痛くなる（顔を洗う時など）
3. 腰を反らせると楽になる
4. 臥位（寝ている状態）では症状はない
5. 腰背部に広範囲に症状が出ることが多い
6. 左右差はないことが多い
7. 円背の高齢者に多い

• 長時間庭の草取りや畑仕事をして腰が痛い
• 仕事などで長時間立位で前かがみ気味の姿勢をしていて腰が痛い
• 猫背でのデスクワークで腰が痛い

だれもが一度は経験したことがあると思います。

いわゆる不良姿勢からくる姿勢性腰痛です。

１度や２度なら単なる腰背部の筋疲労なのですが、こうしたことが長時間、長期間続くことが腰部コンパートメント症候群の引き金になってしまいます。

腰部コンパートメント症候群では脊柱起立筋と多裂筋が疲労して弱くなっています。

ですからセルフケア方法はシンプルに緩めることと収縮させて強化することです。

治療院では緩めることは出来ても、強化するトレーニングなどはご自身で行っていただく必要があります。

また猫背（円背）では骨盤の後傾が起きているため、この改善も必要です。

脊柱起立筋と多裂筋を伸張ー収縮させて緩ませるには猫のポーズがおススメ。

この運動では骨盤も動くため猫背の原因である骨盤後傾の改善にも効果があります。

1. 四つん這いになり腹式呼吸をします。
2. 息を吐きながらゆっくりと背中を丸めます。
3. 息を吸いながら背中を反らせます。
4. 写真３枚目のようにお尻を引いて反らすのもいいですよ。
5. １０回ワンセット、1日３セット

腰部コンパートメント症候群では腰背部の脊柱起立筋と多裂筋を強化する必要があります。

またそうすることで骨盤が前傾するので猫背（円背）が改善できます。

1. 四つん這いなり、手は肩の下、膝は股関節の下にします
2. 右手を水平に上げます、次に左足を水平に上げます
3. 難しい方は手と足を別々に行ってください
4. この姿勢を１０秒キープ
5. 逆の左手と右足も同様に行ってください
6. ５回ワンセットを１日２セット

腰部コンパートメント症候群は中高年の方に多い腰痛です。

この世代は椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症、内臓疾患などの特異的腰痛をはじめ、椎間板性、椎間関節性、仙腸関節性、筋筋膜性などその他の非特異的腰痛を持っている可能性があります。

大切なことは

しっかりとお話を伺って、動きを診て痛みを評価することです。

そのために施術時間以外に最大で３０分程度余分にお時間を頂いております。

セルフケアのところでもお話しましたが、腰部コンパートメント症候群では背骨沿いにある脊柱起立筋とその深部にある多裂筋が疲労し筋力低下しています。

あん摩マッサージでほぐすことは即効性がありますが、深部にある多裂筋にアプローチするには鍼灸治療がおススメです。

また単に筋肉を緩めるだけでなく、動かしたり収縮させて活性化することも必要で

そのため低周波鍼通電（電気鍼）や促通法（筋肉を収縮させて活性化する）を症状に合わせてご提案しています。

ただ筋の活性化は日ごろのセルフケアが何より重要です。